陶器と磁器 茶碗

陶器と磁器

いろいろなところで目にする食器。気にしてみると、これらの食器の多くは「陶磁器」が使用されています。
そんな陶磁器は、「陶器」と「磁器」の2種類に分けることができます。
今回はそんな陶器と磁器をテーマにそれぞれの特徴や違いを紹介していきます。

■陶器と磁器の特徴

・やきもの

陶器と磁器の総称として「やきもの」と呼ばれることがあります。
やきものに共通する特徴として科学的に丈夫で長持ちするという特徴があります。
古代の土器がきれいな状態で発見されることもあるように、やきものは外的衝撃がなければそのままの形を維持し続けるのです。
これは有機物や金属を遥かにしのぐ丈夫さです。ですが欠点もあります。
やきものの欠点は何といっても脆く壊れやすいという点です。強い衝撃や急激な温度変化に弱いといった特性はなかなか克服できません。

・陶器

陶器は「土もの」とも呼ばれ、陶土といわれる粘土を素材に作られます。
陶土で作ったものの中でも釉薬の掛かったものを「陶器」といいますが、土器や焼締も含んで陶器と呼ぶこともあります。

陶土は有色の粘土であり、陶器はそれを原料にしている為、焼き上がった際に土の色合いや風合いが強くなることから釉薬が厚くかけられている場合が多いです。その為、貫入(かんにゅう)と呼ばれる釉薬の収縮によるヒビが見られます。

焼成温度も磁器より低い900℃~1300℃くらいである為、磁器に比べ脆くなります。また、陶器には吸水性があります。これは焼成温度が低いので多孔質(多数の小さな空気穴がある状態)になる為です。

見た目の特徴として陶器は厚手につくられます。これは、原料である陶土に可塑性があり自由に成形できる反面、形が崩れやすいという特性の為です。

これらの特徴がある陶器。技術的には陶器は磁器に劣りますが、実用面ではこれらの特徴がメリットとなる場合もあります。
例えば、熱いものを入れるときです。陶器は厚手で多孔質の為、熱伝導しにくく素手で持っても熱くなりません。
これは日本の文化にもみられます。例えば、コップと湯呑です。磁器文化の根強いヨーロッパでは熱いものを飲む際、取っ手が必要でした。しかし陶器文化の日本の湯呑には取っ手がありません。

このように、陶器は技術的に磁器に劣るものの、生活に根付いた食器なのです。

・磁器

一方、磁器は「石もの」とも呼ばれ、陶石(磁石)や長石、珪石(けいせき)を砕いたものをカオリンを含む不純物の少ない粘土と混ぜ合わせたものを原料としています。
陶器と同じく、こちらも釉薬が掛かったものを「磁器」、かかってないものを「炻器(せっき)」と呼びます。

陶器と違い磁器の素地は白く、白さを活かした白い食器やカラフルな色合いの食器が多くあります。

焼成温度は1200℃~1400℃と高温であり、そのため素地が緻密となり丈夫になります。
また、高温により陶石や長石、珪石が溶けガラスとなり、それが器を覆うことでガラスのような質感となり、吸水性もなくなります。

見た目の特徴として磁器は薄くつくられています。これは、原料が陶器ほど可塑性がないことから薄く作れるのです。また磁器は焼成の段階で半分ガラス化しているので光を通します。また、たたくと「チン」と高い音がします。

磁器は技術的にやきものの頂点に位置しています。磁器は素地が白く透過性が高いほど高級品であり、16世紀のヨーロッパでは純白で硬く、薄く、繊細で優美な器として王室や宮廷で流行っていたそうです。
最近では磁器も大量生産されており、だれでも手軽に手に入れられる食器となりました。磁器は薄く吸水性がない為、日常で使いやすく、素地が白いのでさまざまな絵付けや鮮やかな色が出来ることもありとても人気ですね。
今では見かける食器のほとんどが磁器のように感じます。

陶器の茶碗

磁器の茶碗

■陶器と磁器の違い

陶器と磁器の違いをまとめました。

原料

陶器は陶土と呼ばれる粘土の割合が多い原料を使用しており、土ものと呼ばれる。磁器は長石の割合が多く、不純物が少ない粘土を使用しており、石ものと呼ばれる。

素地

陶器は緻密に焼結しているが、多孔質であり磁器に比べ脆い。
磁器は焼締まりガラス化しているため硬い。

色合い(素地)

陶器は有色で白・赤・黒・青・緑・茶など多数あり、粘土の成分により土地柄の違いが出る。磁器は無色(白)である為、土地ごとの違いはあまりありません。

貫入

陶器は有り。
経年貫入ができることもありますが、磁器には見てわかるほどの貫入はありません。

吸水性

陶器は吸水性があります。なので、使用後には乾燥して保管する必要があります。
磁器は高温での焼成により素地が緻密でガラス化する為、吸水性はありません。

透光性

陶器には透光性はありませんが、磁器はガラス化する為、透光性があります。

陶器はたたくと鈍い音がし、磁器は金属のような澄んだ音がします。

熱伝導

熱いものを入れた際、陶器は熱くなりにくく、磁器は熱くなりやすいです。

重量

同じ厚みなら、陶器の方が多孔質の分軽く、磁器の方が重くなります。

質感

磁器はざらざらとしていますが、陶器はガラスのようなつるつるとした質感となります。

上記の違いがある陶器と磁器。
これらの違いから、陶器と磁器では使い方や保管方法に気を付けないといけないところがいくつかあります。

・陶器は吸水性がある為、そのまま使用すると汁気や油分がしみ込み「しみ」や「におい」の原因となります。陶器を使用する際は事前に水またはぬるま湯に浸して水分を含ませてからご使用ください。
・陶器を洗った後は水分が良くしみ込んでいますので、よく乾燥させてからしまいます。すぐにしまってしまうと、カビの原因となります。
・電子レンジの使用は基本的には大丈夫ですが、温度変化に弱いので急激な温度変化によって割れる可能性があります。冷蔵庫から出したての冷えた食器の使用はお控えください。また陶器は素地に浸み込んだ水分の温度変化で割れやすくなります。
絵付けのあるものは温度変化により絵付けが劣化することもあります。また金や銀、プラチナなどの金属の絵付けは電子レンジの故障の原因となりますので使用は控えましょう。
・オーブンはおすすめしません。陶磁器は温度変化に弱い為、加熱は控えましょう。オーブンを使用する際は耐熱用の食器をお勧めします。

■まとめ

最近では使い勝手が良い磁器を陶器風に作っている製品が多く、陶器を目にする機会はあまりないかもしれません。
しかし、このような違いを知ると「陶磁器」に対する見方も少し変わると思います。

先に述べたように、「やきもの」は大切に扱えば一生物となりえます。
「陶器」と「磁器」の特性を知ることは、大切な食器を末永く使う秘訣となるかもしれませんね。

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